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1cm以上の脚長差をインソールだけで補正してはいけない理由|義肢装具士が解説する4つのリスク

  • 19 時間前
  • 読了時間: 11分

義肢装具士が解説!1cm以上の脚長差をインソールだけで補正するのが危険な理由

脚長差(足の長さの違い)を補正する際、靴の中にインソールを入れて高さを調整することがあります。

最もお手軽な方法ではありますが、実は「1cm以上の脚長差をインソールだけで補正するのは危険」です。

理由は単純で、靴が脱げて転倒する可能性が跳ね上がるからです。

インソールの厚みで踵(かかと)の位置が上がると、靴の「ヒールカウンター(かかとをホールドする硬い部分)」の機能が失われ、靴が脱げるリスクが上昇します。


結論から言えば、1cm以上の補正には「靴の内部(インソール)」ではなく「靴の外部(アウトソール)」へのアプローチが必要不可欠です。


今回は、

  • 1cm以上の脚長差をインソールだけで補正するのはなぜ危険なのか?

  • インソールでの補正以外にはどんな方法があるのか?

  • 靴工房マルエが推奨する「インソールと併用した補正方法」


これらについて、義肢装具士の視点から詳しく解説します。



1cm以上の脚長差をインソールだけで補正すると発生する4つのリスク

m以上の高さをインソールだけで補正しようとすると、主に以下の4つのリスクが発生します。      踵が脱げる「ピストニング」と転倒・捻挫のリスク    アキレス腱やふくらはぎの筋肉が「縮んでしまう」リスク    前足部(つま先側)への過剰な負担と足のトラブル    柔らかい素材による不安定性

1cm以上の高さをインソールだけで補正しようとすると、主に以下の4つのリスクが発生します。

  1. 踵が脱げる「ピストニング」と転倒・捻挫のリスク

  2. アキレス腱やふくらはぎの筋肉が「縮んでしまう」リスク

  3. 前足部(つま先側)への過剰な負担と足のトラブル

  4. 柔らかい素材による不安定性


特に「1」は、履き始めてすぐに不意に発生しうる危険なリスクです。「2・3・4」は長期間の使用によって引き起こされる問題ですが、歩行パターンそのものに悪影響を及ぼす重大な要因となるため、決して軽視できません。


1. 踵が脱げる「ピストニング」と転倒・捻挫のリスク


一般的な靴に厚み1cm以上のインソールを入れると、靴の踵を包み込む硬い部分から踵がすっかり浮き上がってしまいます。

その結果、歩くたびに踵が靴からスポスポと上下に抜けてしまう「ピストニング(Pistoning)」という現象が起きます。足首がグラグラと不安定になるため、捻挫をしたり、バランスを崩して転倒したりする危険性が急激に高まります。

「じゃあ、大きいサイズの靴を履けば解決するのでは?」と思われるかもしれませんが、これはNGです。サイズを大きくしてもヒールカウンターの高さは変わらないため、脱げやすさは解消されません。むしろ、靴の中で足が前後左右に動くようになり、不安定感がさらに増してしまいます。脚長差の補正に限らず、インソールを入れるからといって過度に靴のサイズを大きくすることはおすすめしません。


2. アキレス腱やふくらはぎの筋肉が「縮んでしまう」リスク

インソール(特に踵だけを高くするヒールリフト)を使用すると、足首は常に「つま先立ち」に近い状態になります。

この状態が長期間続くと、アキレス腱やふくらはぎの筋肉がその短い状態に適応し、縮こまってしまいます(適応短縮)。筋肉や腱が縮んでしまうと、靴を脱いで裸足になった際に踵を地面につけるのが難しくなったり、無理に伸ばされることでアキレス腱炎や足底筋膜炎を引き起こす原因となります。

脚長差の補正は、長期間、あるいは恒久的に行うケースが大半です。長い時間つま先立ちの状態が続くことになるため、腱や筋肉が短縮するリスクも当然高くなります。 (※かといって、踵だけでなくインソール全体の厚みを高くしてしまうと、今度は靴の中に足を入れるスペースがなくなり、靴自体が履けなくなって本末転倒です)


3. 前足部(つま先側)への過剰な負担と足のトラブル

踵だけを高くすると、靴の中で足が前滑りし、体重の負荷が前足部(足の指の付け根など)に集中します。

これにより、足の甲の骨(中足骨)の頭部への圧力が極端に増大し、足裏にタコ(胼胝)ができたり、激しい痛み(中足骨頭部痛)が生じやすくなります。また、足が持ち上げられることで靴の中が窮屈になり、靴の天井部分(アッパー)に足の甲が押し付けられ、圧迫による痛みや血流障害の原因となる可能性もあります。


4. 柔らかい素材による不安定性

市販のヒールパッドやインソールは、柔らかいスポンジやジェル素材を使用しているものが多くあります。短期間かつ1cm以内の補正であれば大きな問題は生じにくいです。しかし長期間、柔らかい素材のインソールに、体重をかけ続けると素材が潰れてしまい、本来必要な高さを保てなくなります。

また、素材が柔らかすぎると、歩くたびに踵が深く沈み込んで上下に動きすぎてしまい、靴擦れなどを引き起こす要因となります。


そもそも脚長差の補正は何cmから始めるのか?についてはこの記事でも解説しています

脚長差2cm以内様子見は間違い

インソール以外の補正方法とは?


脚長差、インソールの以外の補正の方法は?

脚長差をインソール以外で補正する方法は、主に以下の2つです。

・市販の靴の靴底を厚底加工する

 ・自分専用の補高靴をオーダーメイドで製作する

いずれの方法も、靴底の厚みを加工することで脚長差を補正します。


靴底加工やオーダーメイドの費用目安


靴底を加工する場合(市販靴の改造)

加工費用の目安は8,000円程度です。補正する高さによって変動します(例:高さ4cmまで基本料金、以降2cmごとに+1,500円など)。これに靴本体の購入代金が加算されます。


オーダーメイドで製作する場合 

製作費用の目安は10万円前後です。デザインや使用する材料によって金額が変動します。


どちらがおすすめ?市販の靴を改造するだけでも大丈夫?


脚長差の補正だけに絞れば、オーダーメイドで靴を作らなくても「市販の靴の改造」だけで全く問題ありません。


リウマチによる足部の変形やリンパ浮腫など、市販の靴では対応が難しいケースを除き、基本的には市販の靴を加工する方法をおすすめしています。


脚長差の補正だけでなく、足裏のケアも同時に考えましょう。


実は、脚長差を放置すると、腰や膝、股関節だけでなく「足の裏」にも大きな負担がかかってしまいます。

例えば、長い方の足は左右の高さを揃えようとしてアーチを過剰に潰し「扁平足」になりやすく、逆に短い方の足は高さを出そうと「ハイアーチ(甲高)」の傾向が強くなります。左右で全く違う負担が足の裏にかかり続けるため、タコや外反母趾などの痛みにつながるリスク要因となります。


そのため、脚長差を補正する際は、靴底の加工だけでなくインソールを併用して足裏の環境を整えることを強くおすすめします。


脚長差の補正の方法論についてはこちらの記事で解説しています。


盲点になりがちな「家の中での補正」の重要性

脚長差の補正は屋外用の靴にばかり注目しがちですが、実は「家の中での生活」にも目を向ける必要があります。

1日の総歩数のうち、およそ30%〜50%は「屋内で発生している」というデータがあり、高齢になるほどその割合は増えていきます。歩行時だけでなく、🍳炊事・🧺洗濯・🧹掃除などの立ち仕事中も、脚長差による骨盤の傾きが腰や膝へダイレクトに負担をかけ続けています。

また、屋外(補正あり)と屋内(補正なし)で体のバランス状態が変わると、脳や体が混乱し、せっかくのリハビリ効果などが半減してしまうリスクもあります。だからこそ、屋内での脚長差補正は非常に重要です。


室内での脚長差の補正についてはこちらの記事も参考にしてください。

屋内の脚長差補正方法論についてのリンク

靴工房マルエが推奨する脚長差のトータル補正

靴工房マルエが推奨する脚長差のトータル補正

日本では家の中を裸足で過ごす文化があるため、室内での脚長差補正は軽視されがちです。そこで靴工房マルエでは、屋内での脚長差補正と足裏ケアを同時に叶える「インソール搭載のケアサンダル」の導入をご提案しています。


当店が最も推奨しているのは、以下の組み合わせです。

  1. 屋外: 市販の靴底加工 + オーダーメイドイン

  2. 屋内: 厚底加工を施した専用ケアサンダル(インソール搭載)


靴底の加工で左右の高さを合わせつつ、お客様の足を計測して製作するインソールで足裏の負担を軽減。さらにインソールを併用することで、数ミリ単位の細かな高さ調整が可能となり、より快適で自然な歩行へと導きます。

加工用の靴は、お客様の持ち込みでも、工房でのご購入でも構いません。工房でご購入される場合は、足の計測を行った上で、最適な一足をご提案させていただきます。

靴工房マルエでは、靴の販売から改造・調整、オーダーメイドシューズの製作、修理まで幅広く対応しております。ご自身に合った脚長差の補正方法が知りたい方は、どうぞお気軽にご相談ください。


まとめ 1cm以上の脚長差は「靴底加工」と「室内対策」で安全に補正


今回は、1cm以上の脚長差をインソールだけで補正する危険性と、その解決策について解説しました。 最後に、この記事の重要なポイントを振り返ります。


  • インソール単体での無理な補正はNG: 踵が脱げて転倒するリスク(ピストニング)や、アキレス腱の短縮、足の甲や裏への過剰な負担に繋がります。

  • 基本は「市販靴の靴底加工」で解決: オーダーメイド靴を作らなくても、市販の靴底に厚みを持たせる加工で、安全に脚長差を補正できます。

  • インソールは「足裏ケア」として併用: 高さを出すためではなく、脚長差によって崩れがちな足裏のアーチを支え、負担を軽減するために活用しましょう。

  • 盲点になりがちな「室内での対策」が鍵: 1日の歩行の多くは家の中で発生します。厚底加工を施した室内用ケアサンダルを取り入れることが、全身のバランスを保つ上で非常に重要です。


「インソールを入れてみたけれど、靴が脱げやすくて歩きにくい」「家の中だと腰や膝が痛む…」——そんな違和感があれば、無理は禁物です。

思わぬ転倒やケガに繋がる前に、ぜひ一度「靴工房マルエ」へご相談ください。お一人おひとりの足の状態と日々の生活環境にしっかり向き合い、安全で快適な「トータル補正」をご提案いたします。


もしかして私も? 30秒でできる「脚長差」セルフチェック

30秒でできる脚長差のセルフチェック

「もしかして、自分の不調の原因も脚長差?」 そう思った方は、まずご自宅で簡単なチェックをしてみてください。

  • ズボンの裾(すそ) いつも片方だけ裾が地面に擦れたり、破れたりしていませんか?

  • 靴底の減り方 左右の靴底を見比べたとき、片方だけ極端に減っていませんか?

  • ベルトの位置 鏡の前に立った時、ベルトのラインがどちらかに傾いていませんか?

  • 片足立ちのしやすさ 「右足は安定するけど、左足はグラグラする」といった左右差がありませんか?

これらに当てはまる場合、脚長差が隠れている可能性があります。



【重要】義肢装具士からのお願い

ここで、専門家として一つだけ強くお伝えしたいことがあります。

もし上記のチェックに当てはまったり、不調を感じたりしている場合は、自己判断でインソールを買う前に、まずは必ず「整形外科」を受診してください。

理由は2つあります。

  1. 正確な差はレントゲンでないと分からない 私たちが見ても、外見上の長さと骨の実測値が異なることはよくあります。正確な「脚長差(何mm違うのか)」を知るには、医師による画像診断が不可欠です。

  2. インソールや靴の補正が「逆効果」になることも 実は、脚の長さが違う原因が「骨」ではなく、「骨盤のゆがみ」で短く見えているだけの場合(機能的脚長差)も多いです。もし「ゆがみ」が原因なら、自己判断でインソールを入れたり、靴の補正(補高)をしたりするのは逆効果です。 本来はリハビリで治すべきゆがみを、これらで固定してしまい、かえって痛みを悪化させる恐れがあるからです。

「靴やインソールで補正すべき脚」なのか、「リハビリで治すべき脚」なのか。 それを見極められるのは、医療機関だけです。


まずは医療機関で、医師にしっかりと診てもらうことが重要です。



病院に行った後、ぶつかる「3つの壁」

整形外科で診断を受けた際、治療として「足底装具(インソール)」での調整を提案されることが一般的です。

しかし、実際に生活してみると、患者様はしばしば「インソールだけでは解決できない壁」にぶつかります。

  • 「1cm以上の差」の壁 インソールだけで高くしようとすると、靴のカカトが浅くなり、歩くたびに脱げそうになってしまう。

  • 「靴型装具」のハードル かといって、保険でフルオーダーの靴(靴型装具)を作るのは、金額も手続きも大掛かり。「脚長差の補正のためだけに作るのはオーバースペック(過剰)」だと感じてしまう。

  • 「既製靴加工」の不在 「市販の靴の底だけ、きれいに高くしてくれればいいのに……」と思っても、それを医学的視点を持って行える業者が近くに見つからない。

このような「日常の靴」の悩み、靴工房マルエにお任せください。


当店では他店で購入された靴の「持ち込み加工」も行っております。

実際に加工できるかどうか、靴の素材や構造を確認した上で判断いたしますので、まずは相談したい靴をご持参いただければと思います。

「病院に行くほどでもないかな…」と迷っている段階でのご相談も歓迎です。靴の専門店として、適切なアドバイスをさせていただきます。


▼まずは気軽に聞いてみたい方へ

手持ちの靴の写真をスマホで撮って送るだけ!「この靴は加工できる?」「いくらくらいかかる?」など、LINEから無料でご相談いただけます。


(※PCでご覧の方は、こちらのQRコードをスマホで読み取ってください)


▼料金や具体的な補正事例を詳しく知りたい方へ

当店の脚長差(LLD)補正のメニュー、料金目安についてはこちらからご覧いただけます。

[靴工房マルエ 脚長差補正専門ページ]

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靴工房マルエ 技術監修 / 義肢装具士

現役の義肢装具士(国家資格保持者)。 普段は医療機関にて装具製作に従事していますが、「病院や製作所だけでは解決できない『日常の靴』の悩みを救いたい」という想いから、実家の靴工房マルエにて技術監修を行っています。 医療現場の知識と靴屋の技術を掛け合わせ、脚長差(LLD)や足のトラブルに対して、医学知識に基づいた解決策を提案・執筆しています。





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