1cm・2cm・3cm…脚長差はどう補正する?インソール・靴底加工・オーダー補高靴【義肢装具士が解説】
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「病院で足(脚)の長さに左右差があると言われたけれど、具体的にどう補正すればいいのかわからない……」とお悩みではありませんか?
「市販のインソール(中敷き)を使うだけでいいの?」 「そもそも何cmの差から補正が必要なの?1cm?2cm?それとも3cm以上?」 「家の中ではどう過ごせばいいの?」
脚長差(きゃくちょうさ)に関するこのような疑問に、靴工房マルエに在籍する現役の義肢装具士がお答えします。
結論から申し上げますと、脚長差を的確に補正するための方法は主に以下の3つです。
インソール(中敷き)を入れて補正する
靴底を加工して高さを出す(靴底加工)
オーダーメイド等で専用の補高靴を作る
本記事では、これらの具体的な方法論に加え、それぞれのメリット・デメリット、気になる費用感の目安についても詳しく解説します。ご自身の脚長差に合った最適な補正方法を見つけるための参考にしてください。
脚長差は何センチから補正すべき?放置するリスク

脚長差が1cm以上ある場合は、積極的な補正を検討すべきです。
1cm以上の差を放置すると、変形性股関節症など「股関節を痛める原因」になるだけでなく、腰痛の引き金や、歩行バランスの崩れによる疲労増大を招くことが報告されています。 「数センチだから軽度」と妥協するのではなく、体への負担を最小限に抑えるためにも、左右差を5mm以内に収めるような補正を心がけましょう。
脚長差の補正は何cmから始めるのか?についてはこの記事でも解説しています。
脚長差の3つの解決策:補正の方法論

「自分の足には、どの補正方法が合っているのだろう?」 病院で脚長差を指摘された方や、日常的な歩きにくさを感じている方にとって、正しい補正方法の選択は身体への負担を減らすために非常に重要です。
もし1cm以上の差があるなら、靴工房マルエとして一番におすすめしたいのは「2. 靴底の加工」による補正です。
ここからは、現役の義肢装具士の視点から、各方法の具体的な仕組みと選ぶ際の注意点について詳しく解説します。ご自身の状態と照らし合わせながら読み進めてみてください。
1. インソール(中敷き)で補正する(目安:1cm以下の脚長差)

脚長差のある短い方の足にのみインソール(中敷き)を入れ、高さを底上げして左右の長さを揃える方法です。靴の内部だけで完結するため、外見からは補正していることがわからず、最も手軽に試せるアプローチと言えます。
【メリット】
比較的安価で手軽に始められる
外見上、靴のデザインを損なわない
【デメリット・注意点】
靴の中の容量が狭くなるため、足の甲などに圧迫感が生じやすい
踵(かかと)が浮きやすくなり、靴が脱げやすくなる
⚠️インソールでの補正は「1cm以内」が限界です
基本として、インソールのみで脚長差を補正して良いのは「1cm以内」のケースのみです。1cm以上の補正をインソールだけで行うのは、専門家の視点から明確にNG(推奨できない)と言えます。
【1cm以上がNGな理由】
靴の踵部分には、足をしっかりホールドして歩行を安定させるための「カウンター(月型芯)」と呼ばれる硬いパーツが入っています。1cm以上インソールを高くしてしまうと、足の踵がこのカウンターの本来の位置より上に飛び出してしまいます。 その結果、踵を支える機能が全く効かなくなり、歩くたびに足と靴が離れてパカパカと脱げてしまいます。これでは歩行が不安定になり、かえって足や膝を痛める原因となるため、インソール単体での無理な底上げはおすすめできません。
2. 靴底の加工による補正(目安:1cm以上の脚長差)

靴の底に専用の補高素材(EVAなど)を追加し、靴そのものの高さを物理的に上げる方法です。インソールでは対応しきれない1cm以上の程度の脚長差に対して、最も推奨する確実なアプローチです。
【メリット】
踵(かかと)のホールド感が保たれる:靴本来のカウンター(月型芯)がしっかり効くため、踵が浮かず、安定した正しい歩行が可能です。
お気に入りの靴を活かせる:スニーカー、ウォーキングシューズ、革靴など、幅広い種類の市販靴に加工を施すことができます。
【デメリット・注意点】
外見の変化:補高した分の厚みが外側から見えるため、左右で靴底の厚みが違うことがわかります。
3. 補高靴をオーダーメイドで制作する(足に変形がある場合など)

足の変形(外反母趾やリウマチなど)、麻痺といった他のトラブルを伴う場合に、個人の足の形状に合わせて一から靴を製作する方法です。
【メリット】
複合的な足の悩みも解決できる:左右で足のサイズや幅が全く違う場合でも、完全にフィットする靴を手に入れることができます。
【デメリット・注意点】
費用が高額:完全なオーダーメイドとなるため、数万円から十数万円程度の費用がかかります(※ただし、医師の診断に基づく治療用装具であれば、健康保険や障害者総合支援法による補助の対象となる場合があります)。
デザインの制限:足の保護と歩行機能を最優先して設計した場合、一般的なファッション靴に比べると、デザインや細身のシルエットに制限が出ることがあります。
【ケース別】最適な補正の方法論

ここからは、脚長差の程度(cm)に応じた、具体的な補正の方法論についてご紹介します。
1cm以内の場合
基本的にはインソール(中敷き)だけの補正で問題ありません。短い方の足に5mm〜1cm程度のフラットな中敷きを追加して高さを調整します。 もし、中敷きを1枚入れることで靴の中の容量がいっぱいになり、足の甲が圧迫されてしまう場合は、踵(かかと)から中足部にかけて徐々に薄くなる**「楔(くさび)型のヒールウェッジ」**を踵の下に仕込むことで、圧迫感を逃がしつつ高さを出す対応が可能です。
2cm以内の場合
足に重度の変形がない限り、お手持ちの**「既製品の靴の靴底」を加工して補正する方法**を推奨します。 例えば2cmの脚長差がある場合、靴底の間に素材を挟み込んで1.5cmかさ上げし、残りの5mmを靴の中のインソールで調整します。最終的に左右の長さの差が「5mm以内」の許容範囲に収まるように、靴の内と外の両面からバランス良く調整します。
3cm以上の場合
基本の考え方は2cm以内の場合と同じで、靴底の加工とインソールの組み合わせで最終的な差を5mm以内に収めます。 ただし、3cm以上も靴底を厚くすると、靴底が曲がりにくくなり、歩くときに足がつまずきやすくなります。そのため靴工房マルエでは、歩行時の「踏み返し」の動作を邪魔しないよう、つま先を反り上がらせる加工し、トゥースプリングをつけます。これにより、厚底でも足が自然と前に転がるように計算して設計しています。
靴工房マルエが「インソールとのセット調整」を強く推奨する理由
「靴底の加工だけで高さを揃えれば良いのでは?」と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。脚長差がある方の足は、左右でまったく異なる負担がかかっています。
👣 長い方の足: 無意識に膝や足を曲げて長さを吸収しようとするため、「扁平足(土踏まずが潰れる)」になりやすい傾向があります。
🏔️ 短い方の足: 常につま先立ちのような状態で地面に届かせようとするため、「ハイアーチ(甲が高くなる・尖足)」になりやすい傾向があります。
このように、左右で足の形やアーチの崩れ方が全く異なるため、「左右別々の形状のインソール」で足裏のアーチを支えてあげることが必須となります。お持ち込みの靴を加工する場合でも、可能な限りインソールとの併用を推奨しているのはこのためです。
盲点になりがち!「室内(家の中)」も必ず補正しましょう
病院や外出先では補正した靴を履いていても、家の中では裸足や普通のスリッパで過ごしていませんか? 「家ではあまり歩かないから……」と思われがちですが、見落としてはいけない事実があります。それは、私たちの総歩数のうち、30%〜50%は「屋内で発生している」ということです。
さらに、🍳炊事・🧺洗濯・🧹掃除といった家事の多くは「立ち仕事」です。歩いていなくても、止まって立っている時こそ、脚長差による骨盤の傾きは腰や膝へダイレクトに負担をかけ続けています。
身体のバランスを整えるためには、「良い状態を途切れさせないこと(連続性)」が何よりも重要です。
体のバランスを整える続けるためには、家の中でもルームシューズを履いて、外履いてる靴と同じ補正を施す必要があります。
屋内補正の重要性についてはこの記事でも紹介しています。
靴工房マルエでは、オーダーメイドの靴やインソールを設計している専門家として、屋内での活動を支える「ケアサンダル」を販売しています。ケアサンダルはオーダーメイドの商品です。脚長差の補正だけではなく、お客様の足の状態に合わせて最適な加工プランを提供します。
靴工房マルエなら「3つの補正方法」すべてに対応可能です
ここまで脚長差の3つの補正方法をご紹介しましたが、「結局、自分の足や予算にはどれが一番合っているのだろう?」と迷われる方も多いかもしれません。
私たち「靴工房マルエ」の最大の強みは、インソール(中敷き)・靴底の補高加工・オーダーメイドの補高靴、そのすべてに自社で対応できる点にあります。
「まずは手持ちのスニーカーを加工して試してみたい」
「屋内でも脚長差を補正したい」
「足の変形もあるため、フルオーダーでしっかりした靴を作りたい」
など、どのようなお悩みでもご相談ください。義肢装具士の医学的な視点と靴専門店の技術を掛け合わせ、お客様の足の状態、ライフスタイル、そしてご予算に合わせて、最も身体への負担が少なく最適な選択肢をご提案いたします。
まとめ:脚長差を正しく補正して、身体への負担を減らそう
脚長差の補正について、現役の義肢装具士の視点から具体的な方法論を解説しました。本記事の重要なポイントは以下の3つです。
1cm以上の脚長差はインソール(中敷き)単体での補正はNG(踵が脱げて危険なため)
2cm、3cmといった脚長差には「靴底加工」と「インソール」のセット調整が最適
外出時だけでなく、総歩数の多くを占める「室内」での補正も徹底する
脚の長さが違う状態を放置すると、膝や腰、股関節に大きな負担がかかり、将来的な痛みの原因になってしまいます。「何センチの差があるのか」「どんな補正方法が適しているか」は自己判断せず、まずは整形外科などの医療機関で正確な診断を受けることが大切です。
ご自身の足の状態に合った正しい補正方法(補高靴や靴底加工)を見つけ、快適で安定した歩行を取り戻しましょう。
もしかして私も? 30秒でできる「脚長差」セルフチェック

「もしかして、自分の不調の原因も脚長差?」 そう思った方は、まずご自宅で簡単なチェックをしてみてください。
ズボンの裾(すそ) いつも片方だけ裾が地面に擦れたり、破れたりしていませんか?
靴底の減り方 左右の靴底を見比べたとき、片方だけ極端に減っていませんか?
ベルトの位置 鏡の前に立った時、ベルトのラインがどちらかに傾いていませんか?
片足立ちのしやすさ 「右足は安定するけど、左足はグラグラする」といった左右差がありませんか?
これらに当てはまる場合、脚長差が隠れている可能性があります。
【重要】義肢装具士からのお願い
ここで、専門家として一つだけ強くお伝えしたいことがあります。
もし上記のチェックに当てはまったり、不調を感じたりしている場合は、自己判断でインソールを買う前に、まずは必ず「整形外科」を受診してください。
理由は2つあります。
正確な差はレントゲンでないと分からない 私たちが見ても、外見上の長さと骨の実測値が異なることはよくあります。正確な「脚長差(何mm違うのか)」を知るには、医師による画像診断が不可欠です。
インソールや靴の補正が「逆効果」になることも 実は、脚の長さが違う原因が「骨」ではなく、「骨盤のゆがみ」で短く見えているだけの場合(機能的脚長差)も多いです。もし「ゆがみ」が原因なら、自己判断でインソールを入れたり、靴の補正(補高)をしたりするのは逆効果です。 本来はリハビリで治すべきゆがみを、これらで固定してしまい、かえって痛みを悪化させる恐れがあるからです。
「靴やインソールで補正すべき脚」なのか、「リハビリで治すべき脚」なのか。 それを見極められるのは、医療機関だけです。
まずは医療機関で、医師にしっかりと診てもらうことが重要です。
病院に行った後、ぶつかる「3つの壁」
整形外科で診断を受けた際、治療として「足底装具(インソール)」での調整を提案されることが一般的です。 しかし、実際に生活してみると、多くの方がしばしば「インソールだけでは解決できない壁」にぶつかります。
「1cm以上の差」の壁 インソールだけで高くしようとすると、靴のカカトが浅くなり、歩くたびに脱げそうになってしまう。
「靴型装具」のハードル かといって、保険でフルオーダーの靴(靴型装具)を作るのは、金額も手続きも大掛かり。「脚長差の補正のためだけに作るのはオーバースペック(過剰)」だと感じてしまう。
「既製靴加工」の不在 「市販の靴の底だけ、きれいに高くしてくれればいいのに……」と思っても、それを医学的視点を持って行える業者が近くに見つからない。
このような「日常の靴」の悩み、靴工房マルエにお任せください。
当店では他店で購入された靴の「持ち込み加工」も行っております。
「加工の可否は、靴の素材や構造を確認した上で判断いたします。 直接店舗にご持参いただくか、ご来店が難しい場合はLINEにお写真を送っていただければ、画像での確認も可能です。お気軽にご相談ください。」
「病院に行くほどでもないかな…」と迷っている段階でのご相談も歓迎です。靴の専門店として、適切なアドバイスをさせていただきます。
靴工房マルエ 技術監修 / 義肢装具士
現役の義肢装具士(国家資格保持者)。 普段は医療機関にて装具製作に従事していますが、「病院や製作所だけでは解決できない『日常の靴』の悩みを救いたい」という想いから、実家の靴工房マルエにて技術監修を行っています。 医療現場の知識と靴屋の技術を掛け合わせ、脚長差(LLD)や足のトラブルに対して、医学知識に基づいた解決策を提案・執筆しています。









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